「吉田の日々赤裸々。2」は管理職になってしまった全ての開発エンジニアに読んで欲しい一冊だ

タイトルで言いたいことは全て言ってしまったので気が楽になった。あとは気持ちの赴くままに書き連ねていこう。

小学生の夏休み明け。住んでいた町の小さな図書館で開催された読書感想文コンクールに、私の感想文が入選した。宿題の課題提出物だった。ノート5冊セットと鉛筆をもらえたように思う。ミヒャエル・エンデの作品世界について延々と語った文章はちょっと変わり種で、きっと真面目な感想文の中で人目を引いたのだろう。

それからは幾度か賞金稼ぎのようにあちこちのコンクールに応募した。小さな小さな町だったので、私と別の小学校にいたもう一人が常連だった。その子とは中学で出会い、高校も同じ。今でも年賀状のやり取りをしている。

そんな私だったので、アレコレと書くことが大好きなまま大人になり、好きなだけ書けるブログも手に入れた。
さぁ久しぶりの「読書感想文」だ。

ミステリ

第1巻を読んだ時の感想が「吉田さん森博嗣お好きでしょう?」だったことが、どこかでうっかり本人に伝わってしまったのかどうかは定かではないが、ついにミステリに関するコラムが登場した。やったね。

「吉田の日々赤裸々。」(吉田直樹著)を読んだレビュー。吉田直樹は旧版FF14から新生FF14をローンチするまでの舞台裏で一体何をしていたのか。どこか懐かしい文体もミステリファンにクリティカルヒット。

その人がどんな人かを知るのに「好きな本」を聞くのは面白い。厨二臭かったり、そのくせロジカルだったりするのはパズラーだからか、なるほどこっちの系統へ進んだのだな、などと読書遍歴でその人の背景が見えてくるからだ。

オススメのミステリ4作品も挙げている。このセレクトが実に優しい。そもそもミステリ好きにはオススメするまでもないし、ならば今までミステリを読んだことのない人にオススメするのはコレだろう、という王道作品だ。どれもとっつきやすく、おおっという驚きの演出もある。

もちろん森作品はアレ。あの広大な迷宮に飛び込むにはアレからスタートするしかないのだ。

どっぷりミステリ好きな人と語り合うために名作を4本挙げろ、と言えばきっとまた別の作品が出てくるだろう。それも聞いてみたいところ。

常体と敬体

このコラム、毎回目まぐるしく常体と敬体が入れ替わる。(一話のコラムの中では統一されている)

淡々と事実を追ったり、自身の内面を吐露するような時は常体を、
イベントや開発・運営の中で誰かに感謝をしたり、読者に語りかけたりするような時は敬体を使用しているように見える。(例外は付き物)

私もブログの中で両者を混在させることがあるが、なんというか、常体はリズム感とスピードがいい。どんどん畳み掛けるような場面では常体でアクセルを踏みたいし、読者に柔らかな印象を与えたい時は敬体だ。

つまり、文体も吉田さんのロールプレイの一つなのではないかな、とふと思う。

グリーンライトプロセス

グリーンライトプロセスとは、商品やプロジェクトの企画立案から開発終了まで、各マイルストーンにゲートを用意し、そのゲートで審査をパスしなければつぎに進めないという手法です。

(「吉田の日々赤裸々。2」本文より)

MMORPGの第一線の開発者らしい話題が出てきた。海外ではプロジェクトごとに投資を募り、開発を行うことが多い。そのため各工程で厳しい審査をパスしなければ、そこで投資は打ち切られ日の目を見ない。非常にシビアだが明快で、投資により大作MMORPGを制作することができる。

ではなぜ日本ではこのやり方がほとんど実用化されていないのか、という部分に関して、吉田さんは日本のゲーム産業が開発側と経営側に分かれてしまっている歴史や状況によるものであろうと考えている。

これはゲーム業界のみの話ではない。そもそも大学進学の際に「理系」と「文系」に分かれてしまったことで、大多数のメーカーが「開発側」と「経営側」に人材も業務内容も分けてしまった。そしてそれぞれの業務内容に集中する方針を取った。

だが、開発者も40代半ば、ちょうど吉田さんくらいの年齢になってくると、管理者としての立場を与えられてしまう。良い製品を開発することだけに集中できた若手の頃とは異なり、今までさほど考えたこともなかった「売上」「利益率」「コスト」「スケジュール管理」「人材育成」なども考えねばならなくなる。ここに思い悩むエンジニアは多い。

海外の手法を安易に日本で取り入れられるわけはないし、それがベストな選択であるかも業界や立場によって異なるだろうが、ゲーム業界の海外の最前線はこういう手法を取っているのか、という実例は一読に値する。

タスク管理とタスク分解

こちらも管理者になってしまった開発エンジニア向けのお話。

吉田さんがどうやって数百人のプロジェクトチームのタスク管理をし、(ほぼ)予定通りにパッチのアップデートを迎えられているのか、ここがビジネスマンにとっては最も注目するところなのではないか。

吉田さんはタスクをかなり詳細に分解し、それぞれのタスクにかかる予想時間を最小(MIN)と最大(MAX)で算出し、その平均値を見ていくことで時間管理をしているそうだ。その見積時間が個人によってブレる場合はその性格も考慮し、見積時間が曖昧な場合は、よりタスクを詳細に分解して客観的に判断できるようにする。

吉田さんがコラム執筆のプロセスで例えているように、この手法が使えるのはビジネスの場面だけではない。子育てで時間が無いというお父さんお母さんや、レイドとギャザクラと探検手帳を両立させる光の戦士の時間配分にも応用できる(かもしれない)。時間に追われるギリギリの場面というのは精神的にも負担が大きいものだ。客観視できる手法があるのだということに気付くと、少しラクになれることもあるだろう。

インターネットの怖さ

ここはお子さんにも読んでいただきたい部分。インターネットの黎明期からその発展を見、現在ネットワークを使ったゲームを運営する吉田さんの立場で言う言葉には重みがある。

安易になんでもかんでもアップロードしたり発言したりせずに、ちょっとその影響を考えてくださいね、というのは私も日々思うこと。
そのデータ、一生残るんですよ。

光のお父さん

先日、ようやく名古屋でも放映され、視聴することができた「光のお父さん」。深夜枠を上手く活かしてギリギリまでやりたいことをやった、いいドラマだった。

その制作の裏でスクエニ側は何を考え、行動していたのかというお話。一つの企画の陰で無数の可能性と消えていったアイデアがあったのだろうなぁ。壁を突破する情熱というのは凄まじいものだな。

ララフェルのくだりは笑ってしまった。けれども、こういう客観視を持てるのは重要だね。

紅蓮のリベレーター開発秘話

紅蓮の発表までの開発順序の話は興味深かった。
まずBG班(バックグラウンド)から開発作業が始まるというのは、業界としては当たり前なのかもしれないけれど、エオルゼアの一住民としては嬉しくなる事実だった。まず最初に世界ができて、それからお話やキャラクターが生まれるんだ。リアルもゲームも変わらないのだな。

プレゼン内容のスケジューリングも面白い。まんまとその罠にハマって、計画通りにワーキャーしていたもん、私。

あのオサードの地図を見た瞬間の興奮は忘れない。

5.0も期待していますよ?(プレッシャーをかけていくスタイル)

オケコン

なんだかもう、オケコンに行ってもいないのに、「Answers」のくだりでじんわり来てしまった。私も吉田さんと同世代。涙腺の防御力はほとんど消失している。

あの曲はレガシーにとっては特別だった。終末に向けてなんとなく聞こえてきた誰かの歌。誰が歌っているんだろう?何が起こるんだろう?

世界が新生することは分かっていた。それを待ち望んでもいた。それでも、自分達が暮らし、精一杯愛してきた、今のこのエオルゼアは失くなってしまうのだ、もう二度とここには戻れないのだと思うと、泣けて泣けて仕方がなかった。「時代の終焉」はそういうトレーラーだった。

オケコンは演者・観客双方に物凄いインパクトを残したようだ。

オーケストラの総譜からロック、ジャズ、ドラヴァニアの吹きすさぶ風、床の足音まで作れる音楽家がどれだけいるだろうか。祖堅さんはその下地を父・祖堅方正さんからきちんと継いでいた。きっと植松さんと並び称されるマエストロになることだろう。その時もやっぱり照れくさそうに自己紹介するんだろう。

そして、我々の愛するマエストロはいつまでこうなんだろう…( ´_ゝ`)

「言葉」

書き下ろしのスカリー女史、カッコ良かった。そう、人は自分の能力を客観視して、行ける場所へ行かなくてはならない。ここは全ての方に読んでもらいたいなぁ。

吉田さんがなんと言われたかは読んでいただくとして、私が人生の中で印象に残っている言葉もちょっと自分語りしてみよう。読み飛ばしていただいて構わない。

「お前、工学部向きやな」
高校の数学の先生に言われた言葉。Z会の問題で、正四面体(だったかな)の頂点と底面の中心に軸を通し、そこを中心に回転させたら外周はどんな形を描くか、みたいなのが解けなくて、厚紙を切って正四面体を作り、クリップを引き伸ばした針金をぶっ刺してフーフー吹きながら先生に見せた。「こうすると双曲線のような気がするんですが、解き方が分かりません」と言った私にくれた言葉。
先生は理学部だったので、正解へのアプローチが全く異なることを面白いと思ってくれたらしい。
素直な私は「そうか、向いてるのか」と工学部へ進学した。口は悪かったけれどあったかくて、本質を突く人だった。お元気かしら。

「トラブルが起きたらすぐ現場へ行け」
これは昔の上司に言われた言葉。メールや電話で済まさずにすぐ現場へ駆けつけるのが結果的に一番解決が速い、ということだ。誠意を持って応対し、困っていることに対して一緒に解決策を立てれば最悪の事態にはならないと教えてくれた。先送りして逃げるのは最悪手だとも。
決して頭を下げるだけではなく、場面に応じていろいろな提案のできる凄い人だった。

「アクティブリスン」
これは父の言葉。「Active listening」なのだろうと思う。コミュニケーションの手法で、相槌を打ったり、楽しそうな表情をしたり、相手の話を聞く時のコツみたいなものだ。話す相手の話を本当に興味があるように楽しそうに聞け、と繰り返し言われたので現在も実践中。これは役に立っている。

吉田直樹プロデューサー兼ディレクターの能力とは

最後まで読み終えて、結局吉田さんの評価が高いところはどこなのだろうと考える。

「わかりやすさ」なのではなかろうか。

プロデューサー兼ディレクターでプロジェクトの全てを把握し、まず自身のわからない部分・曖昧な部分を無くす。
タスクを分解し、それぞれ詳細が客観視できるようにし、スケジュールを組み、伝える。
指示も判断も速くて明快。その理由も説明できるように準備している。
ミスをした時はすぐに原因を究明し、対策を明示し、一つずつ解消していく。

当たり前と言えばどれも当たり前のことなのだが、これらを総合して、他人の能力を上手く管理して使うという部分に長けているように見える。経営側の目を持ち、エンジニアの言葉で語れる、といったところだろうか。これが得意なエンジニアはそんなに多くはないだろうから、目立って見えるのかもしれない。

あとね、商売が上手い。
小売も中小企業も経験しているからか、「何を作って何をどう売るべきなのか」というシンプルな部分をいつもちゃんと考えている。

結果、吉田さんがいつも言うように、一つずつコツコツ積み上げて行った結果が実績になっているのだろう。面白い人だ。もうちょっと見ていたいと思わせるところがある。

…というわけなのでですね、全国の書店の皆様、もしこの文章を目にするという奇特な方がおりましたならば、ぜひこの本をビジネス書籍コーナーにもそっと置いておいてほしいわけですよ! なんならコンピュータ関連専門書籍のとこにも! ゲーム攻略本のとこにだけ置かれているのはもったいない! 中高年のエンジニアにも読んでほしい一冊なのです!

プロデューサー兼ディレクターという仕事のせいで、この一冊の中だけでも吉田さんの経験する事は多岐に渡っていて、その経験談だけでも他に比類するものはありません。スラスラ読めちゃう割には結構いろんな業界事情を知れてしまいます。面白かった!

おまけ

松野さんの帯が思いっきり弾けてて笑ってしまったww
あの松野泰己にここまで言わせてしまうとは、吉田直樹、何者。

吉田の日々赤裸々。2 プロデューサー兼ディレクターの頭の中

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オポネさん、教えてくださってありがとうございます…!(* ゚д゚)

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コメント

  1. XASH より:

    ちょうど自分も昨晩読み終わりました。

    今回はFF関係ない話が多めでしたが、すごくためになる本でしたね。
    やっぱり叩き上げは違うなあ、と。
    まあ、叩き上げじゃあないゲーム開発者がいるのかって話ですが。

    オケコンに関しては、自分は最終公演に居合わせたので、あの時の興奮が甦るようでした。
    最終公演取れて本当によかった。

    三巻も早く読みたいですねえ。

  2. あるひゃ より:

    >ザッシュさん
    いろいろな経験をしている方のお話は面白いですね。
    タフだしw
    FF14の開発に関係なく、今後もコラムやエッセイが出たら読んでみたいなぁ。

  3. キャス・コッチャ より:

    読書感想文というのはこういうのを言うのか(‘Д’)
    文章だけでは伝わらない部分までアルヒャさんの感じた思いを知れた気がしました。

    1巻も買っているんだけど未だに読めていない私…w
    ゲームで遊んでばかりいないでたまには読書に時間をとらないとね(´Д`)
    帰宅時に電車で小説は読んでるけど、最近はすぐ寝てしまって遅々として進みません。
    おかげで読みたい本がどんどんたまっていく。日々赤裸々もその1冊。ゲームで夜更かししてるからだw

    私が書店勤めしていた時に出てたなら、間違いなくアルヒャさんの進言に従って
    店長にお願いしてビジネス書籍のとこに置いてもらったのにw

  4. あるひゃ より:

    >キャスさん
    ちょっと張り切って書いちゃった(゚д゚)
    コラムだからシャキ待ちに1話ずつ読むのをオススメしますよ!
    仕事行く時の電車で読んでもいいかもしれない。
    光の書店員さんがどこかで凄いポップ書いてたりしないかなー。